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Report 「Workshop &CYCLE #4」 Part.01

ものづくりにじっくりと向き合う、デシベル“出張”ワークショップ

何かが生まれる背景・ストーリーを知り、体感する

 

「Workshop&CYCLE」第4回目が8月の初旬に開催されました。
早朝に集合し、日中の街中を自転車で駆け、皆で昼食を取ったり、東京の下町ならではのものづくりを見学・体験したりと、グループライドとワークショップのセットがこれまでのお馴染みのプログラム。今回は少し趣向が変わり、日中に職人さんによる出張ワークショップ、日が暮れて外が涼しくなった夜にグループライドという2段階の展開。レポートのパート1は、前半のワークショップの模様をお届けします。

 

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〈デシベル〉ディレクターの内田潤さん。約6年前から自転車に乗り出し、生活スタイルや着る物、すべてが変わったと言う無類の自転車好き。

今回の講師は、RATIO &Cでも展開されている革小物ブランド〈Decibell(デシベル)〉のディレクターを務める内田潤さん。東京の墨田区・東向島を約60年前から拠点とする革工房、サトウ商店を引き継ぎ、自分が欲しい物だけを作るという方針の元、〈デシベル〉を立ち上げたとのこと。

サトウ商店が立ち上がった当時は当たり前にあった手作りの世界。それがメーカーにシフトしていくうちに段々と少なくなっていってしまった。何かが生まれる背景・ストーリー、どういう人がどういう場所でどういう物を作っているのか。それらを内田さんはワークショップを通して伝えたいと言います。

 

 

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あまり手が加えられていないすっぴん状態のもの、経年変化がしやすい独特な風合いをものなど、全部で7種類の革が用意されました。

 

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ワークショップで使用した器具類。どれも内田さんの工房でいつも使用されているもので、かなりの年季が入っている代物。

 

時が進むにつれ、段々と集中力が高まっていく

 

今回はカップスリーブ、コインケース、ペンケースの作りに挑戦。3つのうち1つを選び制作しました。すでに革がそれぞれの形にカットされているため、共通する大きく分けて3つの仕上げ作業を行っていきます。1つ目はカットされた革の断面を整える作業。カットされたままの状態だとやや毛羽立っていてあまり美しくないため、スムージングし断面を丸めつつ、同時に艶を出していくのが第一工程です。

 

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スポンジについた道具で、蜜のような少しドロッとした溶剤を断面に塗っていきます。一辺ずつ、側面にはみ出し過ぎないよう丁寧かつ慎重に。

 

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右手に持っている物はスリッカーと呼ばれる器具で、この先の凹みを使い溶剤を塗った断面を10回程度、角を潰すように撫でていきます。

 

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断面が綺麗に丸くなってきたら、布で溶剤をふき取ります。少し力を入れながら行うと、次第に断面に艶が生まれます。

 

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作業が進むにつれ、黙々と手元に集中する参加者たち。いつの間にか、話し声も少なくなっていきました。ONIBUSのスペシャルティコーヒーを飲みながら、ワークショップは行われました。

 

2つ目の工程は捻付け作業。何もない革の縁に一本の溝を入れて存在感をさらに引き立てます。この作業は通常、職人さんが3~4カ月かけてマスターする、少々難易度が高いものなのですが、今回は特別に内田さんが組み込んで下さいました。

 

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先端が鉤型の2枚刃になっている器具を使います。片方の刃の内側を革の縁に沿わせなぞっていくと、もう片方の刃が革に当たり溝ができるという仕組み。

 

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最初はそーっと引き、うっすらと線が刻まれたら少しだけ力を加え、押し戻していくと溝がくっきりとします。焦ると線がずれてしまうので要注意。一枚の革が、オリジナルプロダクトへと変わる瞬間。

 

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いよいよ終盤戦。ここからは、刻印を入れたり、穴を開けたりするデザインの工程に入ります。作った革製品にそれぞれのオリジナリティを与える作業です。

 

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アルファベットの刻印をハンマーで叩き名前を入れる人、いくつもの穴を開け作り文字にする人など三者三様。皆、試行錯誤しながら仕上げていきます。

 

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RATIO &Cオリジナルの焼き印も用意。記念ということで、この焼き印を入れる人が続出。かなりの好評を得たようでした。留め具をつけて作業終了。

 

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完成した作品がこちら。7種類の革、3つのデザインパターン、刻印、以上の組み合わせで生まれるものは無限大。個性豊かなオリジナルの革製品が誕生しました。

 

今回の内容はビギナー向けでも上級レベルだったと内田さんは言います。作業時間は1時間半~2時間ほど。通常の「Workshop &CYCLE」では、ライド体験に割く時間が大半を占めます。そのため、今回のようにワークショップだけを独立して開催することで、時間をかけ、より充実した内容を体験することができました。「出張ワークショップははじめてだったので、コーヒーを飲みながらゆっくりとやるコンセプトにも惹かれました」と語ります。

 

「職人にとってものづくりは日常で特別なことではないですが、参加して下さった方の、『集中して作業に打ち込める時間が過ごせた』『素晴らしい記念になった』という声を聞くことができるとやはり嬉しいですよね。僕にとってもワークショップはいつも貴重な経験になっているんです」

 

ワークショップの意義とは何か。それは単に何かを作る手ほどきを熟練の技術者から受けるということだけではなく、作り手の気持ちを知り、ものづくりにかかる時間を参加者の皆で共有し合うことだとも言えます。それらの経験によって、物を選ぶ基準が変わり、物に対する愛着はきっと深まっていくはずです。

 

パート1はここまで。パート2ではワークショップの後に行われたナイトライドの模様をお届けします。