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BOOK COLUMN vol.1

ご挨拶 – 本を読んでみると自転車が楽しくなるのではないかという希望

お店にお越しいただいている皆様はご存知かと思いますが、昨年2016年11月からRATIO &Cで本の取扱がはじまりました。僕はブックディレクターという立場で、その本の選書、ディレクションをやらせていただいています。実家が仙台の自転車屋である僕にとって願ってもないオファーであった上に、父が元ブリヂストンの社員ということもあり、何だか勝手に必然性すら感じる仕事になりました。さて、自転車とライフスタイルを繋ぐ場であるRATIO &Cに、いったいどんな本を置けばお客様に喜んでいただけるかいろいろと悩みました。

 

自転車とライフスタイルを繋ぐということは、自転車そのものがすべての目的にはならないということです。なぜ自転車に乗るのか、自転車に乗ってどこに行くのか、自転車はどんな時間や体験を与えてくれるのか、自転車があることで私たちの何が変わるのかということを考えることで、自転車のある暮らしがより一層魅力的になるような本があるべきではないか。

 

そこで本は、「自転車」「近くへ」「遠くへ」という3つのセグメントからなる構成にしました。「自転車」は、歴史やプロダクト、カルチャー、自転車への愛を謳うものなど、自転車そのものについての本。「近くへ」は、RATIO &Cのある外苑前を起点に自転車で行ける範囲を基準にし、「遠くへ」は、海外をはじめ絶景や物語、絵本など物理的に遠いものから実際に行けない場所のものまでを範疇にして、暮らし、移動、旅、ツールとしての自転車という視点を入れながら選書しています。いつも通る道も、新しい知識や情報ひとつでまったく違う景色になることのおもしろさや、まだ見ぬ場所へ向かうことを妄想するきっかけとして。

 

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5月には商品の入れ替えをし、「近くへ」は、東京のカルチャーを生み出してきた街・渋谷&原宿をテーマに、戦後の米軍用マンションにいた子どもたちの写真集から近年のハロウィンの狂騒を記録した本まで。「遠くへ」は、自転車が描かれた絵本を揃えました(ちなみに、入れ替え以前の「近くへ」は、街にある文字をめぐるタイポグラフィ散歩、「遠くへ」はまだ見ぬ世界の絶景でした)。

 

自転車は人力で走る最速の乗り物です。免許もガソリンもいらないし、(土地のない東京で高い)駐車場を借りる必要もない(駐輪場はご利用ください)。歩くよりも(体力的にも時間的にも)気軽にいろいろな道へ入っていくことができる。自転車は、自分の行動範囲をとても魅力的なものにしてくれます。電車の窓から見えていた良さげなお店にも寄れるし、電車代も節約できて、毎日の運動にもなる。自転車が移動手段になれば、駅から遠い安くて広い物件に住むことも苦ではありません。坂が辛い、雨が辛い、夏は尋常じゃない汗が辛い、冬は耳が尋常じゃないくらい切れそうなどの不利はこの際目を瞑ってください。自転車乗りの中には坂が最高だと叫ぶ、通常では考えられない人もいるわけですし、きっと慣れなのでしょう(到底その境地にはいけなそうですが…)。

 

次回からはお店に置いている本をご紹介していきます。自転車に乗ってどこに行こう。乗っている時に何を楽しもう、行った先で何を楽しもう。そうしたことへの閃きの種が、本を通じてできていってくれたらうれしいです(ひいては自転車カルチャーが盛り上がり、実家の売上にも繋がることを願って…)。

 

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【プロフィール】

山口 博之

1981年仙台市生まれ。立教大学文学部卒業。大学在学中の雑誌「流行通信」編集部でのアルバイトを経て、2004年から旅の本屋「BOOK246」に勤務。06年、選書集団BACHに入社。様々な施設のブックディレクションや編集、執筆、企画などを担当。16年に独立。ブックディレクションをはじめ、さまざまな編集、執筆、企画などを行ない、三越伊勢丹のグローバルグリーンや花々祭などのキャンペーンのクリエイティブディレクションなども手がける。実家は、今年2017年で創業70周年になる仙台の自転車屋。